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「高級食パン」ブーム

ふわふわで甘い「高級食パン」ブームに翳り 半年と持たず閉店する店舗も
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/01240559/

『2斤で800円は当たり前。時には1000円を超え、街のベーカリーショップの5倍以上の価格設定もある「高級食パン」が流行り始めたのは2018年頃のことだった。“手の届くぜいたく”感がその人気の理由とされているが、最近は人気に翳りが見えてきたようだ。
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高級食パンブームの終焉を指摘する声は、SNSにも散見される。1月初旬に投稿された〈変な名前の高級食パン店がバタバタ潰れていて気持ちがホッコリしています〉というツイートには、約3500件のリツイートと約4600件の「いいね」が寄せられた。同じ意見の人は少なくないようだ。
「変な名前の高級食パン店」として挙げられているのは、ベーカリープロデューサー・岸本拓也氏が手掛けたパン屋だった。高級食パン店の開業支援を数多く行ってきた岸本氏は、ブームの仕掛け人としてメディアにもたびたび登場。肩まで伸びた髪につばの広い帽子をかぶり、サングラスをかけた奇抜な出で立ちをご記憶の方も多いだろう。
プロデュースしてきた店の名前も、ルックスに負けず劣らず個性的。「考えた人すごいわ」(東京都清瀬市ほか)、「生とサザンと完熟ボディ」(神奈川県茅ケ崎市)、「夜にパオーン」(静岡県袋井市)など、一度目にすれば忘れられないものばかり。それゆえ閉店が悪目立ちしてしまった感は否めない。
件のツイートで閉店した例として挙げられていたのは4店舗。だが調べると、昨年2021年だけでも15店を超える店舗が閉店していることがわかった。うち9店は開業から1年と経たずに店を閉めている。たとえば、昨年1月にオープンした「遅刻のすすめ」(兵庫県神戸市)は、同年11月に閉店。11月オープンの「あせる王様 ブレッドスタジアム検見川浜店」(千葉県千葉市)に至っては、開業からわずか1カ月で閉店している。
2022年になってからも、1月15日に「偉大なる発明 福岡高宮店」(福岡県福岡市)が閉店したほか(移転予定)、1月末には「告白はママから」(東京都武蔵野市)が閉店予定。いずれも営業期間は1年半に満たなかった。

変な名前

高級食パン店の閉業は、岸本氏のプロデュース店だけにとどまらない。高級食パン店の“顔”的存在である「乃が美」でも、21年2月にオープンした「はなれ 鈴鹿販売店」(三重県鈴鹿市)が、1年ともたず12月末で営業を終了している。今後は移転予定とされているが、「乃が美」の400メートル先には岸本氏が手掛けた「マリリンの秘め事」があり、同じ鈴鹿市内には「HARE/PAN 鈴鹿店」「銀座に志かわ 鈴鹿店」「ねこねこ食パン イオンモール鈴鹿店」と、高級食パン店が乱立する環境だった。ブームの過熱と終焉を象徴するような出来事だといえるだろう。
昨年2月にはモスバーガーも、予約販売で持ち帰り専用の食パンを売り出した。初回は約9万5000個が売れたが、2回目は約4万7000個と売れ行きは半減。9月には販売そのものを休止していた。

そもそも高級食パンとは何なのか。さる大手パンメーカーの関係者は「あくまで一般論ですが」と断ったうえで、次のように語る。
「基本的には、我々がスーパーなどで販売する食パンに比べて“ふわふわで甘い”というのが高級食パンの最大の売りです。ただし大半が、特別に良い原材料を使っているわけではありません。甘さも、バターや生クリーム、ハチミツを多く混ぜ込んで作っているんです。まるで菓子パンのように感じられる商品もありますね」
製法にも特徴があるようだ。
「普通の食パンは『中種法(なかだねほう)』という方法で、簡単に言うと生地をきちんと発酵させて作ります。そのぶん発酵時間をとらねばならず、生地を置いておく場所も必要なのですが、この製法ならば時間が経っても硬くなりにくく、日持ちするパンができます。対して高級食パン店は、大半が『ストレート法』という方法で作っています。こちらは発酵時間が短くて済み、それだけに省スペースの店舗でも大量生産しやすい利点がありますが、美味しさのピークは作った当日で、次の日には味が落ちる。また、焼くとあまり美味しくなく、“生”で食べるのを推奨している店が多いのもそれが理由です。我々のようなパンメーカーは日持ちしない商品を作るわけにはいかないので、高級食パン店のやり方は真似しづらいですね」
マーケティングアナリストの渡辺広明氏は、高級食パンをめぐる現状について次のように分析している。
「結局のところ、高級食パンは価格と価値が一致していなかったという点に尽きるのではないでしょうか。閉業が相次いでいるとのことですが、そもそも営業する側も、長くビジネスをする気はなかったのではないかと思います。高級な食パンという目新しい商品で話題を集め、ブームありきで利益を出す、そうしたビジネスモデルなのではないでしょうか。ただ、ベーカリー業界では、堀江貴文氏が発案したエンタメパン屋『小麦の奴隷』が店舗を増やしているほか、高級食パンと共にフルーツサンドを推す新規店なども見受けられます。“近所のパン屋さん以外”という購買の選択肢は、定着したように思いますね」




「高級食パン」ブームは本当に終了したのか? “大量閉店”騒動が隠した本当の姿
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2204/13/news034.html

『高級食パンのブームが去ったと、今年に入ってよく報道されている。SNSには、高級食パンの店が潰れていたという“閉店情報”の書き込みも目立ってきた。
実際、以前にできていた行列がなくなっていたり、飛ぶように売れていた商品が夜の帰宅時にまだ残っていたりと、1店当たりの売れ行きが鈍っていて、飽和点に近づいているのではないかと感じることがままある。
参考までに、「開店閉店.com」という全国における店舗の開店と閉店をまとめたWebサイトを見てみよう。過去半年のパン・ベーカリーの開店と閉店は、2022年3月(開店56/閉店16)、同年2月(開店40/閉店10)、同年1月(開店32/閉店23)、21年12月(開店59/閉店50)、同年11月(開店66/閉店8)、同年10月(開店77/閉店14)となっている。
パン・ベーカリーのカテゴリーには、高級食パン以外の業態も含まれてはいるが、おおよその傾向はつかめるはずだ。高級食パンを含めたベーカリーショップの出店意欲は相変わらず旺盛だが、閉店も少なくない。
昨年12月の閉店が50店と多いのは、首都圏で39店を展開していた「HOKUO」チェーンが一斉閉店したからだ。HOKUOは1988年から小田急電鉄が長く経営してきたベーカリーで、総菜パン、菓子パン、サンドイッチが中心。駅前に店舗があったため、コロナ禍のステイホームにより電車に乗る人が減ると、大きな影響を受けた。なお、HOKUO店舗のうち小田急沿線の10店は、神戸の「ドンク」に譲渡されて、順次オープンする。

同様に高級食パンも、駅前にある店は売り上げ減に苦しむ傾向がある。
閉店した店のリストを見ていると、ベーカリープロデューサーで、ジャパンベーカリーマーケティング(横浜市)の岸本拓也社長が手掛けた店が目立つ。本記事では、岸本氏プロデュースの店舗群を“岸本ファミリー”と呼ばせてもらう。岸本ファミリーは「考えた人すごいわ」「どんだけ自己中」をはじめ、「あせる王様」「遅刻のすすめ」といったように奇抜なネーミングが特徴だ。岸本氏は閉店した数以上に開店させているが、大量閉店したブランドもある。
岸本ファミリーでも、特に「あせる王様」は苦戦している。20年8月、千葉県船橋市に船橋店をオープンしたのを皮切りに、千葉県に14店にまで急拡大。しかし、21年12月に津田沼店、八千代緑が丘店、稲毛店、北習志野店、C・one店、ブレッドスタジアム検見川浜店と6店が一斉閉店している。千葉市内にあるC・one店は同年9月にオープンしてからたった3カ月、ブレッドスタジアム検見川浜店に至っては同年11月にオープンしてから1カ月しか持たなかった。
「真打ち登場」は19年11月、東京の千駄木にオープン。その後、店舗を10店ほどにまで急拡大したが、今はまた1店に戻った。残りは全て閉店。
「遅刻のすすめ」(神戸市)は、JR六甲道駅の近くに21年1月オープン。しかし、六甲道は高級食パンの激戦地であり、元祖高級食パンといわれる「地蔵家」もすぐ近くにある。競合店の乱立で環境が厳しく、同年11月に閉店した。
「告白はママから」(東京都武蔵野市)も20年8月、吉祥寺にオープンしたが、22年1月に閉店した。どこか1980年代「金妻ブーム」を連想させるネーミングだったが、結果的に支持されにくかったようだ。

高級食パンは果たして本当に限界なのか。現状と展望を分析してみた。
高級食パンはどのような勢力図になっているのか。まずは、各社の公式webサイトから、単純に主なチェーンの店舗数を数えてみた。19年1月6日付の店舗数は、後述する記事(筆者が過去に執筆)を参考にしている。また、「HARE/PAN」「ラ・パン」「本多」「い志かわ」については、「食べログ」などネット上の情報から割り出した。
岸本ファミリーの最新店舗数は、ふじたん(藤田真嗣)氏が運営するWebサイト『まいぱん』より、「岸本拓也さんがプロデュースした高級食パン専門店の全店舗一覧【2022年4月最新】」をベースにしている。また、開店閉店.comも参考にした。「銀座に志かわ」「ワンハンドレッドベーカリー」は、運営会社に直接聞いた。なお、銀座に志かわの最新店舗数は3月31日現在の数字となっている。

【主要高級食パンチェーンの国内店舗数(左が19年1月6日、右が22年4月10日)】
岸本ファミリー(4→260)
乃が美(111→256)
HARE/PAN(3→172)
一本堂(113→128)
銀座に志かわ(1→124)
ラ・パン(1→51)
嵜本(5→37)
高匠(8→35)
panya芦屋(6→16)
本多(5→15)
レブレッソ(3→10)
い志かわ(1→10)
ワンハンドレッドベーカリー(0→8)
俺のベーカリー(8→5)
点心(4→4)

こうして見ると、店舗数からいくつかのグループに分けられそうだ。岸本ファミリーと乃が美はトップを争う最大手第一集団。
一本堂、銀座に志かわ、HARE/PANは、店舗数100を超えた大手第二集団。
ラ・パン、嵜本、高匠は、30~50店ほどの中堅の第三集団。
panya芦屋、本多、レブレッソ、い志かわ、ワンハンドレッドベーカリーは、10~20前後の小チェーンで第四集団。
あとは、地元に愛される個人店や3~5店程度のごく小さなチェーンが多数ある構図だ。
高級食パンがブームだといわれ始めた19年1月6日付で、筆者は「東京と大阪の“抗争”が激化 今年も高級食パン戦争から目が離せない」という記事を書いている。その頃の最大手は、一本堂の113店で、乃が美が111店と肉薄していた。3年で勢力図は一変した。一本堂も乃が美も大阪出身で、東京勢も「セントル ザ・ベーカリー」や俺のベーカリーが出現しており、品質では負けないといった構図だった。
岸本ファミリーは東京郊外の清瀬と横浜の菊名に「考えた人すごいわ」、東京の中野に「うん間違いないっ!」、相模原市の橋本に「これ半端ないって」を出店していて、4店があるのみだった。そこから怒涛(どとう)の勢いで出店を重ねていくのだ。
銀座に志かわはまだ銀座に1店あるだけだった。水にこだわる、独特の和風の風味でこのチェーンも伸びた。
現状、岸本ファミリーの店舗数は、乃が美を抜いて業界トップである。コロナ禍で高まった巣ごもり需要を背景に、外食ができなくなった人の「ささやかな贅沢(ぜいたく)を楽しみたい」という需要を取り込んで、大きく成長した。岸本氏は、この3年の間に潰れた店も合わせて、300店近くの高級食パン店を全国につくりまくっていた。
最初のプロデュース店である「考えた人すごいわ」は、11店まで増えていて順調だ。その後、岸本氏の付けるネーミングも「いつかの馬鹿ップル」「なま剛力スタジアム」「チンパンジーOK」「並んで歯磨き」「ボイン」など、だんだんと独特な雰囲気が醸し出されてくるが、初期の店はしっかりしている感がある。
岸本ファミリーの各店は、岸本氏自身が経営してないので、プロデュースを依頼した人の経営力でその後の運命が変わってくる。同じ人がプロデュースをしているから、店の雰囲気、味や商品内容が似通ってくるのは仕方ない。
乃が美は19年の頃から、「そろそろ限界」ともいわれていたが意外にも店舗が倍増している。
高級食パンの火付け役としての知名度とブランド力が確立されてきたようだ。
乃が美は、麻布十番に東京初となる店舗ができた際に大行列ができていた。現在、同店の行列は見られなくなったものの、都内に19店を擁するようになった。大消費地の首都圏が未開拓だったのが、コロナ禍の間に出店が進んだ。「はなれ 札幌店」が3月に閉店したように、たまに閉店も見られるが、岸本ファミリーのような大量閉店はなく、全般に順調だ。
東京・八王子市の高尾駅販売店では自動販売機を設置して、店舗が営業していない夜中や早朝でもパンが買える取り組みを新たに始める。
このような次の一手に取り組む姿勢が乃が美にはある。
一本堂は、価格が500円を切る商品も多い。他の高級食パンが2斤を中心に1~2種類を売っているのに対して、1斤が基本で種類も豊富。買いやすいのでもっと伸びるかと思われたが、微増(十数店増えただけ)にとどまった。
銀座に志かわは18年9月、東京・銀座に1号店をオープン。19年以降に店舗を急増させて100店を超えてきた。22年中に現在40都道府県にある店舗を全47都道府県にまで浸透させ、150店にまで伸ばすのを目標としている。23年中には200店舗を目指す。
今までに閉店した店は一つもなく、それも特筆するべきことだ。
運営会社である銀座仁志川・広報は、「弊社の水にこだわる高級食パンは、いつ・誰が・どこでつくっても同じ品質になるように、独自の研修システムを行ってきた。オープン後も、月に1回、全店舗の食パンを本部に集めて商品チェックしている。定期的に本部から各店舗に工房スタッフを派遣して、製造工程を確認する。さらには各店の工房にWebカメラも設置して24時間、本部からチェックしている」と、ブランドの維持に全力を挙げていることを強調した。
アルカリイオン水を使った和風テイストの食パンを開発するのに、2年かかったそうだ。新商品として、高級あん食パン「和加らすく」なども投入している。
オープン直後の勢いで行列ができているだけでなく、接客も含めて店舗の品質を維持していく作業に手間暇をかけているのが、これまで閉店がないという実績につながっている。
HARE/PAN、ラ・パン、嵜本、高匠、panya芦屋、本多、レブレッソ、い志かわなども順調に店舗数を伸ばしている。ラ・パン、嵜本、高匠、レブレッソは大阪発祥だ。panya芦屋、本多は兵庫発祥となっており、乃が美や一本堂を含め関西勢が強い。
HARE/PANは埼玉県の南越谷が発祥で、和食に精通した中川透氏(元・名古屋マリオットアソシアホテル「華雲」料理長)の監修。日本の食卓に合う食パンがコンセプトだ。
ラ・パンは大阪の京阪沿線、関目で創業。生地に乳製品と蜂蜜を練り込んだ、高級クリーミー生食パンが売りだ。
嵜本は、母体がチーズタルトの「パブロ」なので、商業施設で伸びそうだ。
高匠は、湯種製法という小麦を湯で捏(こ)ねて低温で熟成させる製法でつくる正統派。
panya芦屋は高級住宅地で知られる兵庫県芦屋市出身。東京の世田谷にも工場を持ち、高級住宅地に強い。
本多は、兵庫県姫路市の発祥。現状は関西、中京、岡山に店舗がある。40種類以上ある「ミニキューブ食パン」という独特な菓子パン的・総菜パン的なミニ食パンが面白い。
レブレッソはコーヒースタンド併設を基本形とし、店内飲食も充実させている。
い志かわは名古屋の高級食パンブームを先導した。東京には荻窪に店舗がある。
俺のベーカリーはかつて8店あったが、5店に減った。俺のシリーズの店は、「俺のフレンチ」なども含めて、東京・銀座など都心部に店舗があり、コロナ禍の影響を大きく受けてしまった。

モスバーガーが山崎製パンと組んで、「バターなんていらないかも、と思わず声に出したくなるほど濃厚な食パン」という、岸本ファミリー風な商品名を付けた高級食パンを出している。また、「寅゛衛門(DORAEMON)」という居酒屋を経営してきたDREAM ON(愛知県一宮市)が、「ワンハンドレッドベーカリー」という高級食パンを販売して行列ができている。このように、だんだんと個人の事業から資本力のある外食企業の事業へと、高級食パンの事業主体に変化の兆しが見えてきている。
モスバーガーは1251店(4月10日現在)もある。21年3~10月に店舗限定で、試験的に食パンを販売したところ、想定の4倍となる約40万斤が売れた。22年3月11日に再開したが、今回は、チョコ味の食パンも追加してパワーアップ。完全予約制で、毎月第2・第4金曜日しか売っていないが、既に高級食パンの店舗数では最大手になっている可能性がある。
ワンハンドレッドベーカリーはバスクチーズケーキも売りで、「エスプレッソ ディー ワークス」というカフェの併設店もある。21年3月、愛知県一宮市に1号店をオープンした最も後発なチェーンだけに、パンだけにこだわらず、売れそうなものを何でも売る姿勢だ。

果たして高級食パンはこの先、専門店として残れるのか。
市場が飽和してサバイバル時代に突入しつつあることを見越して、乃が美では3月26日、台湾の台北市「統一時代百貨台北店」に海外1号店を出店した。日本の高級食パンがどれだけ受け入れられるのか、興味深いチャレンジだ。
銀座に志かわも今年中の海外出店を計画している。
高級食パンは、もうおいしさへのこだわりだけでは難しい。もともと、価格競争で売ってきた商品ではないので、小麦の値上げの影響はそれほど受けないと思われるが、プラスの要素とはいえない。
銀座に志かわでは「4月1日から苦渋の決断で10%の値上げを決めた。それでも、税込み1000円以下になる価格にした」(銀座仁志川・広報)と、購入者がプチ贅沢を楽しめる金額は1000円までという見解を示した。
今後の高級食パンは、過当競争により知名度の高い少数のブランドに集約され、あとは地場の個人店が固定客をつかんで残る展開になりそうだ。岸本ファミリーの一部に起こった崩壊現象はその前哨戦だろう。』


高級パン「銀座に志かわ」元FC加盟店オーナーが証言 「儲けが出ない仕組み」と撤退時のトラブル
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/05261040/

『近年の「高級食パン」ブームに翳りが見えている。競争激化で共喰い状態になり、半年と持たず閉店する店舗もあるのだとか。その状況下でも、「銀座に志かわ」は新規出店を続け、好調ぶりを示している。しかし、店舗の運営会社「銀座仁志川」と揉めた末に撤退するフランチャイズ(FC)加盟店オーナーが相次いでいる事実は知られていない。
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近畿地方でFC加盟店を経営していた元オーナーが明かす。
「私は19年に開店し、昨年の秋に解約しました。そもそも、銀座仁志川本部から提供されるのは、儲けが出るはずのない仕組み。FC加盟店の大半は利益が出ておらず、経営を辞めるオーナーが増えています」
FC契約の際、本部の担当者から開店費用は約3000万円と伝えられた。
「まず、契約金として300万円、保証金100万円。そして出店時の内装工事費が約1250万円、設備什器などに約1300万円、その他、銀座仁志川名義で借りている店舗物件の敷金やら従業員の人件費やらで、1000万円以上かかりました」
担当者から示されたシミュレーションによると、開店後23カ月目には黒字に転じるはずだった。だがそれは、単なる机上の空論と思い知らされる。
「当時は2斤で864円。最初の月は物珍しさもあってか、2万本以上、1800万円を売り上げました。ですが3カ月目にはその半分、半年後には9000本、1年半後は4000本になってしまった」
しかし、本部から一定の材料費などは請求され続けるため、やればやるほど負債が膨らんだ。この元FC加盟店オーナーは、最終的に約4500万円の負債を抱え、撤退を決めた。
元FC加盟店オーナーの証言について、銀座仁志川に訊ねると、
「証言自体の真偽があきらかではありませんので、質問にはお答えしかねます」
高級食パンをめぐるトラブルは、泥沼化の一途を辿りそうだ。』


ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2204/05/news052.html

「高級食パン」のブームが終わるらしい。
「嵜本(さきもと)」「乃が美」の二匹目のドジョウを狙おうと、全国に「高級食パン専門店」が乱立したことで「なんか新鮮味ないよね」と消費者の熱が冷め、オープンしてわずか半年で閉店というケースも増えているそうだ。さらに、ウクライナ危機による小麦価格の急騰がトドメを刺して、18年ごろから続くブームが終焉(しゅうえん)を迎える……と最近さまざまなメデイアが盛んに報じているのだ。
そういう記事を読んでいて、ちょっと気になることがある。同じく「空前の大ブーム」から「閉店ラッシュ」という道を歩んだタピオカやパンケーキという「先人」たちと比べると、世間の風当たりがなんだかちょっぴり強いように思うのだ。
例えば、ネットやSNSには高級食パンは「ぼったくり」「砂糖を入れて甘くしているだけで菓子パンと変わらない」なんて感じで否定的な声が多い。2021年5月28日に放送された『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)で、有吉弘行さんとマツコ・デラックスさんが高級食パンの柔らかさが「ちょっと苦手」「バターと砂糖いっぱい入り過ぎ」などと話題にしたことを受けて、SNSでアンチが「一回買えばいい」「どこがおいしいのか分からない」などと大盛り上がりしたこともあった。
テレビのニュースやバラエティ番組で、毎週のように激安スーパーや激安グルメを紹介しては、「企業努力がスゴい!」と称賛する「安いニッポン」において、食パン2斤で1000円前後する高価格帯に強烈なアレルギーがあるというのは容易に想像できるが、それにしたって叩かれすぎの印象は否めない。

ワインやナチュラルチーズなども、スーパーで売っているような庶民的な価格の製品とは0がひとつ違う高級品もあるが、それらはちゃんと市民権を得ている。普段は500円のワインを飲んでいる人も、高級ワインを「ぼったくり」などとディスったりしないのだ。
にもかかわらず、なぜ「高級食パン」に対しては、ここまで強い迎い風が吹いているのか。ひとつ考えられるのは、「変な名前のパン屋」が悪目立ちしてしまった可能性だ。
近年の高級食パンブームでは、「考えた人すごいわ」(東京都清瀬市ほか)、「生とサザンと完熟ボディ」(神奈川県茅ケ崎市)、「夜にパオーン」(静岡県袋井市)など、個性的な名の店も注目を集めた。皆さんも市街地や国道沿いに突如現れた、謎の言葉が看板に大きく掲げられた高級食パン専門店を見かけたことがあるのではないか。
ちなみに、これはパン屋の開業支援をされているベーカリープロデューサー、岸本拓也氏の“仕掛け”である。岸本氏が代表を務めるジャパンベーカリーマーケティング社の公式Twitterによれば、「日本各地・ アジア・オセアニアに350店舗以上のパン屋さんをプロデュース」しているという。
さて、このような「変な名前のパン屋」の良いところは、やはり目立つことで、SNSやクチコミでも大きな話題となり宣伝費がいらないことだ。が、それは閉店した場合も目立ちやすいということだ。注目を集めていただけに落差も大きく、「目立ったことで行列とかもできていたけど、潰れたってことは食パン自体は大したことなかったってことだよな」という“看板倒れイメージ”が広がってしまうリスクもある。
デイリー新潮の『ふわふわで甘い「高級食パン」ブームに翳り 半年と持たず閉店する店舗も』(1月24日)によれば、これらの「変な名前のパン屋」は21年だけでも15店を超える店舗が閉店しており、うち9店は開業から1年と経たずに店を閉めているという。
これだけ閉店が目立つようになってくると、「やっぱりね」「売れてないんだな」というネガな反応も増えていく。22年1月初旬に投稿された「変な名前の高級食パン店がバタバタ潰れていて気持ちがホッコリしています」というツイートも大きな話題になった。
つまり、「変な名前」によって得ることができた話題性や「面白い!」という好意的なクチコミという好循環が、ブームが下火になったことでそのまま「逆回転」しているのだ。

この悪目立ちに加えて、「高級食パン」に対する世間の風当たりの強さには、もうひとつ大きな原因があるのではないかと個人的には考えている。
それは「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」という日本社会の暗黙のルールだ。これが発動しているので、一般的な食パンの5倍近い高価格を「ぼったくり」だと感じてしまう。多くの人が「高級食パン」に対してうっすら感じている、言葉でうまく説明することができない嫌悪感のもとになっているのではないか。
と聞くと、「日本人の主食はパンじゃなくて米ですよ、そんな常識も知らないんですか」というツッコミが入るかもしれないが、総務省統計局の家計調査によると、14年から21年まで8年連続で、1世帯当たりのパンの支出額が、米の支出額を上回っている。

高級食パン (1)
高級食パン (2)

実はデータ的には、日本人の主食はずいぶん前に米からパンにとって代わっているのだ。
なぜこうなるのかというと、日本人の3割を占める高齢者が米食からパン食に進んでいることが大きい。
ご高齢の親などがいる人は分かるだろうが、実はシニアほどよくパンを食べている実態がある。先ほどの家計調査をみると、最も食パンを購入している単身世帯では、34歳以下よりも60歳以上の高齢者のほうがかなり多いのだ。

さて、このような日本の現状を踏まえて、国民の「主食」であるパンが高額で売られたら、庶民がどんな反応になるだろうか。ヤマザキパンやパスコの良心的な価格の食パンの5倍もする高額なものが扱われ、しかもその店には「夜にパオーン」なんて意味不明な言葉がデカデカと掲げられているのだ。
イラッとする人があらわれるのも、しょうがないのではないか。中には、「他の真面目なパン屋と比べて、そこまで劇的に味が変わるわけじゃないのに、ずいぶんとふっかけるじゃないか」なんて感じで「ぼったくり」という感想を抱く人も出てくるだろう。
つまり、高級食パンへの強い風当たりは、「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」という日本人が大切にしてきた暗黙のルールに対して、ケンカを売るような構図になってしまったでことが大きいのではないか。
なぜ筆者がそのように考えるのかというと、実はこれまで日本人の主食だった「米」に関しても、同じような現象が見て取れるからだ。
世間が「高級食パンブーム」にわく少し前の16年ごろから、「高級米ブーム」が起きていたことはあまり知られていない。この時期、高級ブランド米の代名詞であるコシヒカリに肩を並べる「高級米」が続々と世に送り出されているのだ。その代表が17年に登場した際に、最高級魚沼産コシヒカリに近い、5キロ3200~3500円の値をつけた「新之助」だ。
この「高級米ブーム」も「高級食パンブーム」と同様、大きな話題となって一部の裕福な人たちから「毎日食べたい」と熱烈な支持を受けた。が、一方で一部の庶民からは高級食パン同様にネガティブな反応が見られた。「試しに一度買ってみたけどまずい」「高すぎる」とボロカスに叩く人も出た。
そして、こちらも高級食パンブーム同様、徐々に苦戦していく。『ブランド米が乱立、「いきなり超高級」で背水の陣』(日本経済新聞 2017年10月26日)という記事にはこんな苦境がレポートされている。
『ブランド米が乱立するなか、数年前に出たある銘柄について「なかなか売れなくて困る」と打ち明ける小売店や卸が少なくない。都内の複数のスーパーでこの銘柄の精米日を確かめてみると、1カ月たっている袋もあった。しかし、袋の裏側には「精米から2週間程度が鮮度の目安」などと書いてある』
このように人気はかんばしくなかったが、スーパーや小売店はブランド米を撤去もできず値下げもできない。記事中に登場した大手コメ卸幹部によれば、「県や代理店からブランド力を維持してほしいとの要請が強い」そうで、「我慢比べ」の状態だという。
つまり、米の生産量が大きく落ち込む中で、自治体が生産者の生き残りを目指して、付加価値向上を目指したわけだが、結局「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」という日本社会の暗黙のルールの前に「大苦戦」をしていたというわけである。
「高級食パン」という新たなジャンルで付加価値の向上を目指したものの、結局「高すぎる」「ぼったくりだ」と閉店続出に追い込まれている今のパン業界と同じことが起きていたのだ。

「高級米」と同じ道をたどっているとすると、「高級食パン」の未来は決して明るくない。「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」という消費者の無言の圧力を受けて、じわじわ値下げに追い込まれていくからだ。
日本経済新聞社の調査では、最高級の新潟魚沼産コシヒカリの卸値(1俵=約60キロあたり)は1994年に3万6000円台まで上がってからはじわじわと落ち込んで、2015年ごろになるとなんと94年と比べて4割ほど安い2万2000円台まで低下している。ちなみに、この動きは「失われた30年」で激安になった日本人の賃金ともリンクをしている。
いずれにせよ、「最高級」と言われるコシヒカリでさえ、ここまで分かりやすく「安いニッポン」に屈しているのだ。「高すぎる」と叩かれて閉店が相次ぐ「高級食パン」も軽く軍門に下ってしまうだろう。
という話をすると決まって、「小泉改革が悪い」「円安のせい」「アベノミクスが元凶」「消費税をなくせばすぐに解決」と外的要因に持っていく人たちがいる。まったくの無関係ではないが、「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」というこの暗黙のルールに関しては、そういう最近の表面的な話の結果ではなく、戦前から続く日本人の「信仰」のようなものだ。
よくパンの話になると、「戦後に米国の占領期に給食で出されたことで国民に普及しました」みたいな説明をすることがあるが、実はこれは真っ赤なうそで、戦前から既にパンは日本人にとって欠かせないものとなっていた。
新聞やラジオでは、自宅でおいしいパンのつくり方が連載され、腕の悪いパン屋が増えると、『近頃の食パンはなぜ不味い?』(読売新聞 1935年12月6日)なんて真剣に討論された。だから、戦争に突入すると、「われわれ勤め人は最近街頭に全然パンが無いので困つている」(同紙1941年2月27日)という文句を投書するサラリーマンも多くいた。
戦前の日本で、食パンは今のように「主食」ではなかったが、「米の代用品」という地位を確立していた。言うなれば、「準・主食」だったのである。というわけで、当然これまで申し上げてきた「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」というルールもしっかり適用される。
例えば、満州事変が起きる1年前の1930年7月、「お次はパン値下げ 米の代用品が餘りに高いと警視庁が動き出す」(読売新聞 1930年7月17日)という記事が分かりやすい。
『小市民にとつては米の代用食とも謂ふべきパンの値段が他の日用品と較べて篦棒に高いことを発見し、今度はパンの値下げを行はしむべく之が具体策に付き慎重研究を進めてゐる』
当時、警視庁が原料などから割り出した適正な価格は「一斤八銭」。これで売っても「十分利益はある」とパン屋に値下げを強く要求したわけだが、記事中に登場する「某パン店」は「私のところでも一斤十八銭のを一斤十四銭に下げました。しかし八銭はヒド過ぎますなァ」とため息をついている。
「主食は庶民に行き届くように良心的な価格で売るべし」というルールがこの時代もしっかりと健在だったことがうかがえよう。「高級食パン」に対して「高すぎる」「ぼったくり」とディスる人が多いのは、景気が悪いとか、アベノミクスがどうしたとかと全く関係がなく、われわれ日本人の伝統的な価値観に基づく当たり前の反応ということなのだ。
これまで本連載で繰り返し述べてきたが、「安いニッポン」の根本的な原因は、中小零細企業を税金で手厚く保護をして、「とにかく倒産をさせない」という日本独特の産業構造によるところが大きい。個人よりも法人の生活保障を優先してきた結果、「賃上げは悪」を常識とする「労働者を犠牲に中小企業が延命していく」という世界でも珍しい独特な経済モデルが定着してしまった。
これを解決するには、産業構造の転換を促す、継続的な最低賃金の引き上げが不可欠なのだが、残念ながら政治の力でそれを断行しようとすると、選挙でボロ負けするか支持率が急落するので、失業したくない政治家はこの問題をウヤムヤにして先送りするしかない。
ということは、まだしばらく「安いニッポン」は続くということであり、「高級食パン」や「高級米」もじわじわと窮地に追いやられるということだ。
コシヒカリなど高級ブランド米と同じく、「嵜本」「乃が美」という高級食パン専門店も、こぞって海外進出を目指している。現状ではまだなかなか難しい戦いではあるが、高級米や高級食パンが生き残っていくには、日本よりも賃金が順調に上がっている欧米、中国、台湾、東南アジアなどに標的を絞ったほうがよほど未来はある。
「高すぎる」「ブームはおしまい」なんて感じで、「高級食パン」をディスっている人も多いが、あと10年もしたら「高級食パン」側から見捨てられているのは、「安いニッポン」で貧しくなっているわれわれのほうかもしれない。』

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